服の流通

衣服の製造・流通業はアパレル産業と総称される。ミシンなどの設備と洋裁などの技術があれば、生地を購入した上で自宅で衣服を作ることもいまだ可能ではあり、また高級衣服においては仕立て屋に依頼してオーダーメイドの服を仕立てることも一般的であるが、20世紀後半以降はほとんどの衣服は工場において大量生産された既製服となっている。

衣服生産の機械化と大規模化はミシンの発明と普及によって成し遂げられたが、ミシンは生産過程において人による操作がかならず必要となるため、完全機械化が困難である。これにより大規模な衣服生産には労働力の大量投入が必要となるため、衣料産業は人件費の安価な発展途上国に多く立地しており、また生産国の経済発展により人件費が高騰すると、さらに工賃の安価な国へと拠点が移動することが多い。日本においても1970年代に韓国や台湾へと衣服生産は移行しはじめ、国内生産は1990年代には大きく減少した。さらに2000年頃には中国が衣服の生産拠点となり、その後は東南アジアやバングラデシュが一大生産地となった。このため先進国においては衣服は輸入品が中心となっており、日本では国産の衣服は一方で総点数のわずか2.3%にとどまりながら(2018年)、他方でその金額は24.0%(2016年度)となっている。

生産された衣服の流通経路は従来、卸売商を経て衣料品店や百貨店などの小売店に渡り、そこから消費者の元に届くのであったが、2000年代以降、生産から販売までを一貫して行う製造小売業が登場し有力な販売形態となっている。日本においては1960年代以降、世帯単位の衣料支出の割合は一貫して減り続けており、1990年代以降は絶対額においても減少傾向にある。1990年代以降の衣料支出減少は、長期不況と、ファスト・ファッション化の進行によって衣料の需要が低価格化したことが主因である。

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